CRMを導入・移行するにあたって、ZohoとSalesforceのどちらを選ぶべきか。
調べてみても「結局、自社にはどちらが合うのか分からない…」と迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。

ZohoとSalesforceの違いは、料金と作り込みの自由度に集約されます。同じグレードのプランで料金は約4倍、作り込める範囲の広さと学習コストの高さはSalesforceが上です。日々使う機能そのものに、大きな差はありません。

選び方は、自社の体制で決まります。コストと運用の軽さを重視するベンチャー・中小企業ならZoho CRM、部門をまたぐ複雑な業務を専門部隊で作り込める社内体制ならSalesforceです。

ただ、この結論だけで乗り換えを決められる人は少ないでしょう。実際の料金差はいくらなのか長年蓄積されてきたデータを移せるのか移行した後に自社で運用していけるのか。判断に必要な情報が見つからず、決めきれないまま保留になりがちです。筆者もそうでした。

決めきれないまま時間が過ぎる一方で、Salesforceの料金は上がっています。2025年8月にも値上げがあり、改定は2年おきに続いています。先延ばしにするほど払う総額は増えていくので、契約更新を迎える前に一度見直しておくのがおすすめです。

筆者は実際にSalesforceからZoho CRMへの移行を主導し、今も構築と運用を担当しています。比較記事は数多くありますが、両方を運用したうえで書かれたものは探してもほとんど見当たりません。
SalesforceとZohoどちらも扱ったからこそ分かる違いを、実際の金額と体験を交えて書いています。自社に合うCRMを選ぶ判断材料になれば幸いです。

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ZohoとSalesforceの違いがひと目で分かる比較表(2026年7月時点)

ZohoとSalesforceの違いは、次の4つの軸に整理できます。機能の有無を細かく並べた表は他のサイトにも多いため、この記事では乗り換えを判断するときに実際に問われる観点だけに絞りました。どの軸も、筆者がZohoとSalesforceの両方を使い、実際に移行したうえでの評価です。

比較軸 Zoho CRM Salesforce
料金 上位プランで月額5,660円。無料プランあり 同グレードで月額21,000円と約4倍
機能・カスタマイズ 中小企業の実務には十分。作り込みも習得しやすい どんな要件にも作り込める。専門の開発者が前提
使いやすさ・定着 専門職の市場は小さいが、社内の人材で扱える 専門知識が要る。人材の採用・外注はしやすい
サポート・実績 日本語情報は少なめだが、専用チャットの回答が早い 日本語情報が豊富。11年連続世界シェア1位

比較表の金額はいずれも税抜・年間契約時の1ユーザーあたり月額で、2026年7月時点のものです。それぞれの根拠と出典は、後半の4つの軸の解説でお伝えします。乗り換えを考えている方が気になる移行できるかどうかは、4軸の比較のあとにまとめています。

【結論】コストと運用の軽さを重視するベンチャー・中小企業ならZoho、高度な拡張が可能な社内体制ならSalesforce

Zohoが向くのは、社内にいる人材でCRMを運用していきたい会社です。Salesforceが向くのは、専門知識を持つ人材を確保したうえで、業務に合わせて作り込みたい会社です。判断の基準になるのは、製品の性能よりも自社の体制です

というのも、CRM(顧客情報や商談を管理するシステム)として日々使う機能に、ZohoとSalesforceで大きな差はないからです。顧客管理も商談管理もレポートも自動化も、どちらでもひととおり揃っています。判断を分けるのは、業務プロセスの複雑さとコスト、そして社内の体制の方です。

自社がZohoとSalesforceのどちらに近いかは、次の3つの条件で判断できます。

  • 【業務プロセス】
    部門内で完結する標準的な業務ならZoho、部門をまたぐ複雑な業務ならSalesforce
  • 【社内体制】
    今社内にいる人材で運用したいならZoho、専門知識を持つ人材を採用・外注できるならSalesforce
  • 【コスト許容度】
    ライセンス費を1ユーザーあたり月額6,000円前後に抑えたいならZoho、月額2万円前後を許容できるならSalesforce

機能の比較ではなく自社の体制から考えると、ZohoとSalesforceのどちらが合っているのか判断がつきやすいです。

ZohoとSalesforceの違いを4つの軸で比較

4つの軸は、料金・機能・使いやすさ・サポートと実績の順に解説します。それぞれ実際の金額と出典を示すので、社内で説明するときの根拠としても使えます。

①料金は同じグレードのプランで比べると約4倍の差がある

同じグレードのプラン同士で比べると、Zoho CRMの料金はSalesforceの4分の1程度です。しかもこの差は、導入時に一度だけ払って終わるものではありません。ZohoもSalesforceもサブスク型のため、半永久的にかかる固定コストとなります。

プラン別の月額料金の一覧(税抜・年間契約)

ZohoとSalesforceの現行プランは次のとおりです。金額はいずれも1ユーザーあたりの月額で、年間契約時の額です(2026年7月時点・税抜)。

グレード帯 Zoho CRM Salesforce
無料 無料プラン 0円(3ユーザーまで) 提供なし
入門 スタンダード 1,760円 Starter Suite 3,000円
中位 プロフェッショナル 3,260円 Pro Suite 12,000円
上位 エンタープライズ 5,660円 Enterprise 21,000円
高機能 アルティメット 7,360円 Unlimited 42,000円

最新の金額はZoho CRM公式の料金ページSalesforce公式の料金ページで確認できます。

同じグレード帯にあたるエンタープライズ級で比べると、月額5,660円と21,000円で約4倍の差があります。「Salesforceの方が高機能なのだから当然だろう」と感じるかもしれません。ただ、両方を使った実感で言えば、日々使う機能そのものに価格差ほどの差はないというのが正直な感想です。

30人で3年使うと総額の差は1,000万円規模になる

ZohoとSalesforceの月額の差は小さく見えても、3年間の総額にすると印象が変わります。上位グレード帯を30人で3年使った場合、差は約1,657万円です。

前提 Zoho CRM Salesforce 差額
中位プラン・30人・3年 約352万円 1,296万円 約944万円
上位プラン・30人・3年 約611万円 2,268万円 約1,657万円

試算の前提は次のとおりです。

  • 【中位プランの組み合わせ】
    Zoho CRMのプロフェッショナル(月額3,260円)とSalesforceのPro Suite(月額12,000円)
  • 【上位プランの組み合わせ】
    Zoho CRMのエンタープライズ(月額5,660円)とSalesforceのEnterprise(月額21,000円)
  • 【共通の条件】
    税抜・年間契約・期間中の料金改定なし
  • 【含めていない費用】
    オプション、導入支援、パートナー会社へのカスタマイズ依頼

Salesforceはカスタマイズをパートナー会社に依頼する前提の製品なので、実際にはその費用も上乗せになります。

ZohoとSalesforceの3年間ランニングコスト比較グラフ

上位プランの差額を1人あたりに直すと、年間約18万円です。30人なら年約552万円、3年で約1,657万円を、同じ業務のために多く払い続けることになります。中小企業庁の2025年版中小企業白書でも、中小企業がDXを進めるときの問題点として「費用の負担が大きい」が、取組の段階を問わず上位に挙がっています。ZohoとSalesforceのライセンス費の差は、まさにこの費用負担そのものです。

つまり料金の軸では、3年で約1,657万円の差額を払ってでも、Salesforceの作り込みの自由度を取る価値があるかどうかで判断するのがおすすめです。

Salesforceは値上げが続いており将来コストが読みにくい

今の料金差に加えて、Salesforceの値上げが続いていることも判断材料になります。Salesforceは2025年8月に対象製品を平均6%値上げしました。日本ではEnterpriseが19,800円から21,000円へ、Unlimitedが39,600円から42,000円へ上がっています。詳しい経緯は2025年の価格改定にまとまっています。

値上げが一度きりの改定なら、そういうこともあると受け止められるでしょう。ただ、Salesforceは2023年8月にも平均約9%値上げしており、2年おきに上がっているのが実情です。値上げのたびに新しい機能も追加されますが、その機能を使う予定がなければ、負担だけが増えます。改定がドル建てで発表され、あとから日本円の価格に反映される仕組みも、3年後・5年後の総額を見積もりにくくしています。

Zoho CRMの料金プランを見る

②機能はZohoとSalesforceどちらも十分だが、作り込みの範囲はSalesforce、作りやすさはZohoが上

Zoho CRMがここまで安いと、かえって「安かろう悪かろうではないか」と不安になるかもしれません。中小企業が実務で使う機能の範囲であれば、Zoho CRMに機能不足の心配はほとんど要りません。ZohoとSalesforceで差が出るのは機能の有無ではなく、自社に合わせてどこまで作り込めるかと、その作りやすさです。

CRM・SFAの主要機能はZohoとSalesforceどちらも中小企業の実務には十分

CRM・SFA(営業活動を記録して案件管理を支援するシステム)として日常的に使う機能は、Zoho CRMとSalesforceのどちらにも標準で備わっています。

主要機能 Zoho CRM Salesforce
顧客管理・案件管理 標準搭載 標準搭載
レポート・ダッシュボード 標準搭載 標準搭載
ワークフロー自動化 標準搭載 標準搭載
メール連携・モバイルアプリ 標準搭載 標準搭載

主要な機能を並べても、ZohoとSalesforceにほとんど差はありません。Salesforceの高機能さが活きるのは、日常の機能ではなく、標準機能では足りない部分を自社向けに作り込むところです。裏を返せば、中小企業の実務の範囲なら、安いZoho CRMを選んでも困りません。

高度なカスタマイズはZohoとSalesforceどちらも専用言語のプログラミングが必要になる

項目の追加や画面レイアウト、条件分岐のあるワークフローまでは、ZohoとSalesforceのどちらも設定画面で作れます。設定画面で作れる範囲を超える処理になると、どちらの製品でも専用言語でのプログラミングが必要になります。ZohoとSalesforceで差が出るのは、その専用言語の扱いやすさです。

Zoho CRMで使う言語はDeluge(デリュージ)、Salesforceで使う言語はApex(エイペックス)です。ZohoとSalesforceの両方を扱った立場から言うと、DelugeはApexよりかなり習得しやすい言語です。

項目 Deluge(Zoho CRM) Apex(Salesforce)
文法 読みやすく、変数の型宣言も要らない Javaに近い
テスト用プログラム 必須ではない 動作を検証するために別途書く必要がある
扱える人 社内に多少プログラムを書ける人がいれば十分 実質的に専門の開発者に限られる
作り込める範囲 中小企業の実務で必要な範囲は作れる 事実上どんな要件にも対応できる

Apexは扱える人を選ぶぶん、作り込める範囲を広く取れます。拡張アプリを配布するAppExchange(Salesforce向けアプリの市場)と組み合わせれば、事実上どんな要件にも対応できます。数百人規模の複雑な業務プロセスをそのままシステムに落とし込むなら、ここまでの自由度が必要になります。

一方のDelugeは、管理画面のエディタで書いて、その場で動作を確認できます。画面の作りも分かりやすく、どこに何を書けばよいか迷いません。Zohoの各製品で共通して使えるので、CRM以外のアプリを触るときもそのまま活かせます。

筆者の開発経験で言えば、項目・レイアウト・通知・条件分岐といった要件は、その大半がZohoの設定画面とDelugeの組み合わせで作れます。外部システムとの連携も、要件を整理して設計をやり直せば手が届く範囲です。筆者の会社でもSalesforceとSlack・自社システムが複雑に組み合わされていましたが、Zoho CRMで問題なく作り直せました。

Salesforceの自由度が活きるのは、標準機能から大きく離れた独自の仕組みを作る場合と、AppExchangeにある既製のアプリで要件を満たしたい場合です。 どちらの場合もApexを扱える開発者が前提になるので、その人材を確保できるかどうかが分かれ目になります。

③使いやすさはZohoが上で、社内の人材でも運用しやすい

使いやすさで選ぶならZoho CRMです。設定画面が分かりやすく、専門の人材を採用しなくても、今社内にいる人で運用していけます。

ZohoとSalesforceを機能の多さだけで比べて選ぶと、導入したあとにつまずきます。CRMで成果が出るのは、現場が入力を続けたときだけです。どれだけ多機能でも、現場の業務の進め方に合っておらず、使い方も統一されていなければ、やがて負債になります。

現場にCRMへの入力を続けてもらうには、項目を足したり画面を直したりする担当者が社内に必要です。社内に担当者が必要な点は、ZohoでもSalesforceでも変わりません。ZohoとSalesforceで違うのは、その担当にどこまでの専門知識が求められるか、そしてその人材をどこから調達できるかです。

Salesforceは設定項目が膨大で、扱うには専門的な知識が要ります。ZohoとSalesforceの両方を学んだ筆者の実感では、使いこなせるようになるまでの学習コストはSalesforceの方がかなり高いです。覚えるべき概念も設定画面の階層も多く、独学で全体像をつかむまでに時間がかかりました。

学習コストが高いぶん、「Salesforceエンジニア」は職種として確立していて、採用や外注という手を打てます。裏を返せば、その人材を確保できないまま導入すると、設定を触れる人がいないまま止まってしまいます。特定の担当者しか触れない状態になり、その人がいなくなった途端に「保守不能に陥るCRM」になる話はよく聞きます。

もっとも、Salesforceエンジニアの採用や外注が現実的な会社ばかりではありません。IPA(情報処理推進機構)のDX動向2025ではDXを推進する人材の量と質の不足が課題に挙げられ、中小企業庁の2025年版中小企業白書でも人材不足はDXを進めるうえでの上位の問題点です。人を増やす前提を置けないなら、今社内にいる人が扱えるかどうかが実質的な基準になります。

人材の調達という点で見ると、Zohoは専門職としての市場がまだ小さいのが実情です。「Zohoエンジニア」を採用して任せる形は取りにくく、社内の人が扱えることが条件になります。そこで効いてくるのが、Salesforceと比べたときの画面と仕様の分かりやすさです。Webサイトやシステムの開発経験がある人なら、他の業務と兼務しながらでも習熟できます。

④情報量はSalesforceが豊富だが、問い合わせへの回答はZohoが早い

CRMのサポートには2種類あると筆者は考えています。公式が出しているドキュメントやノウハウと、窓口への問い合わせです。自分で調べて解決するための情報量は、日本での提供期間が長いSalesforceが圧倒的です。一方で、窓口に問い合わせたときの回答はZohoの方が早く、手厚いと感じました。

自分で調べて解決するなら日本語情報の多いSalesforce

Salesforceは日本市場で20年以上の実績があり、日本語のドキュメント・学習コンテンツ・導入パートナー・ユーザーコミュニティのどれをとっても情報量が豊富です。困ったときに日本語で検索すれば答えが見つかる環境は、大きな強みです。

一方のZoho CRMは、日本語ドキュメントの整備が進んでいるものの、細かい仕様は英語のドキュメントしかない場合があります。検索だけで解決しようとすると、Salesforceより時間がかかります。

Zohoの日本語情報の不足は、次の3つの手段で補えます。

  1. AIにWeb検索をさせて、最新のドキュメントを参照してもらう
  2. 示された内容を公式ドキュメントで裏取りする(英語しかない場合は翻訳して読む)
  3. それでも分からなければサポートに問い合わせる

問い合わせるならZohoは専用チャットがあり回答も早い

Zohoには問い合わせ専用のチャット窓口が用意されています。仕様や設定の疑問を、営業担当を介さずその場で聞けます。専任の営業担当は付きませんが、技術的な質問はこの窓口で直接片づきます。

一方のSalesforceには、専任の営業担当が付きます。担当者によっては構築や技術的な相談にも乗ってくれることがあり、そこは心強い部分です。ただしカスタマイズはパートナー会社に任せる前提の製品なので、技術的な支援まで営業担当に期待するのは難しいのが実情です。作り込みを依頼するなら、パートナー会社との契約を別途見込んでおく必要があります。

【比較まとめ】4つの比較軸で見たZohoとSalesforceの違い

4つの比較軸を並べた結果は、3つでZohoに分があり、残る1つも互角でした。ただし、どの軸を重く見るかは会社によって変わります。自社にとってどれが優先度が高いのか検討してみてください。

比較軸 どちらが有利か 押さえておきたい点
料金 Zoho 同グレードで約4倍差。30人・3年なら総額で約1,657万円の開き
機能 互角 日々使う機能に差はない。作り込みの範囲はSalesforceが広い
使いやすさ Zoho 学習コストが低く、社内の人材で運用できる
サポート Zoho 日本語情報の量はSalesforce。ただし問い合わせの回答が早く、実務では困らない

Salesforceが上回るのは、作り込みの範囲と日本語情報の量に限られます。日本語情報の多さは誰にとっても助かる強みです。ただし作り込みの範囲については、Apexを扱える人材を確保して初めて活きます。

Apexを扱える人材をそろえられる会社なら、Salesforceの高い料金に見合う価値があります。そろえられないまま契約すると、使いこなせない機能にお金を払い続けることになります。

会社の規模や体制によって答えは変わります。そのうえでZohoとSalesforceの両方を使った実感を言えば、ほとんどの会社にとってZohoが最善の選択肢だと考えています。

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【参考】市場シェアはSalesforceが11年連続世界1位、Zohoは5,000万ユーザー

実績と知名度で選ぶならSalesforceですが、Zohoも実績が乏しいわけではありません。

SalesforceはIDCの調査によると、2024年のCRM市場で世界シェア20.7%の1位です。1位は11年連続で、国内のCRMアプリケーション市場でも1位を取っています。実績という点では文句のつけようがありません。

一方のZohoは、日本ではSalesforceほど名前が知られていません。ただしZoho Corporationは1996年の設立で、180カ国以上に展開し、全世界5,000万ユーザーに45種類以上の業務アプリを提供しています。日本法人のゾーホージャパンも2001年の設立で、日本市場での提供実績は約20年です。知名度に差はあっても、実績で不安になる規模ではありません。

SalesforceからZohoへの移行は現実的にできる

乗り換えを決める前に、もうひとつ確かめておきたいことがあります。今Salesforceに入っているデータを、Zohoへ移せるのかという問題です。

結論としては、SalesforceからZohoへの移行は現実的に可能です。長年使われてきたSalesforceからZoho CRMへ、筆者が実際に移行した経験から言えることです。長年メンテされずに積み重なった項目もワークフローも、誰も把握できていない状態からの移行でした。

ただし、Salesforceのデータと設定の全てがインポートなどで簡単に移行できるわけではありません。データは移せても、時間をかけて作り込んだ設定や自動化は作り直しになります。 この線引きを知らないまま進めると、切り替え直前に想定外の作業が出てきます。

何が移せて何が移せないか

移行できるものとできないものの区分は、次のとおりです。

対象 移行できるか
取引先・取引先責任者・商談・リードなど標準オブジェクト 移行できる
活動履歴(ToDo・行動) 移行できる。量が多い場合は直近1〜2年分に絞ると現実的
カスタム項目・画面レイアウト Zoho側で再作成する
ワークフローなどの自動化 Zoho側で再実装する
レポート・ダッシュボード Zoho側で再作成する

Zoho CRMには、Salesforceからのデータ移行に対応した専用のインポートウィザードがあります。このインポートウィザードを使えば、取引先と商談の紐付きのような、データ同士の関係を保ったまま移行できます。

ただし、インポートウィザードで移せるのは表にあるとおりデータだけです。設定やワークフローはZoho側で作り直すことになります。別記事で解説予定ですが、Zoho側の構築を効率化する手順があるので、移行対象の洗い出しさえ正しくできれば、工数は最低限に抑えられます。

移行プロジェクト全体の流れは、次の5つのステップです。

SalesforceからZoho CRMへの移行5ステップの全体像図

移行にかかった期間は約10か月で、最も時間を割いたのは棚卸し

SalesforceからZohoへの移行は、数週間で終わる作業ではありません。筆者の場合、現状の棚卸しから完全切り替えまで約10か月かかりました。作り込みの量にもよりますが、半年から1年を見込んでおくと安全だと思います。

移行期間を短くしたいなら、使っていない項目やレポートを移行対象から外すのが確実です。長く使ったSalesforceほど「実は使っていない機能」が溜まっているので、移行は不要なものを整理する機会にもなります。

SalesforceからZohoへ移行して分かった本音

4つの軸を比べただけでは分からないことが、実際に移行して運用すると見えてきます。この章では、筆者が感じたZohoの良かった点と惜しい点を、正直に書きます。

Zohoに移行して良かった点

Zohoに移行して良かった点の1つ目は、ライセンス費が目に見えて下がったことです。削減できた分は、広告や人材採用など売上に直結する使い道に回せますし、予算の都合で見送っていたツールの導入にも踏み切れます。CRMの費用が下がること自体よりも、浮いた予算で別の手を打てるようになったことの方が、会社にとっては大きな変化でした。

Zohoに移行して良かった点の2つ目は、Zoho CRMの設定変更を自分たちだけで完結できるようになったことです。項目の追加やワークフローの変更を、外部への依頼や順番待ちなしに、担当者がその場で済ませられます。こうした小さな改善を自力で積み重ねられると、CRMは現場に定着していきます。

Zohoに移行して良かった点の3つ目は、Zoho CRMの機能に過不足がないことです。移行前は「機能が減って困るのではないか」と心配していました。実際に使ってみると、顧客管理・商談管理・レポート・自動化という日々の業務の範囲で困る場面は、全くありませんでした。

Zohoの惜しい点

正直に書くと、Zohoにも惜しい点があります。

Zohoの惜しい点の1つ目は、日本語の情報が少ないことです。細かい仕様を調べると英語のドキュメントに行き着くことがあり、日本語で検索すれば大抵の答えが見つかるSalesforceとの差を感じます。ただしサポートのチャットに聞けば早く的確に返ってくるので、調べ続けるより問い合わせた方が解決は早いです。それでも、検索だけで済ませられないぶんの手間は残ります。

Zohoの惜しい点の2つ目は、アプリ間の連携にクセがあることです。多数の自社アプリを持つ点はZohoの強みですが、アプリをまたぐ設定では、思いどおりに動くまで試行錯誤が必要な場面もありました。CRM単体で使うなら、この連携のクセは気になりません。複数のアプリを連携させる前提であれば、無料トライアルの段階で連携部分を先に検証しておくことをおすすめします。

Zohoの欠点を並べましたが、「4分の1程度というコスト差を覆すほどの欠点か」と問われれば、全くそうは思いません。
2つとも業務が止まるような欠点ではなく、調べ方や進め方を変えれば避けられるものだからです。

ZohoとSalesforceのどちらを選ぶべきか

ZohoとSalesforceのどちらを選ぶかは、業務プロセス・社内体制・コスト許容度の3つで決まります。迷ったときは、次の判断フローを上から順にたどってみてください。

ZohoとSalesforceの選び方の判断フロー

判断フローの途中で「Salesforceを継続」に行き着いたなら、無理に乗り換える必要はありません。最後まで「Zoho CRMが有力」で残ったなら、乗り換えを具体的に検討する価値があります。

ただし、判断フローは条件を当てはめただけの結果です。自社のデータを入れたZoho CRMの画面を触れば、条件だけでは分からない使い勝手まで確かめられます。Zoho CRMの無料プランは3ユーザーまで0円で、有料プランの機能も15日間試せます。

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Zoho CRMが向いている会社

Zoho CRMが向いているのは、業務プロセスが部門の中で完結していて、今社内にいる人材でCRMを運用したいベンチャー・中小企業です。見込み客・取引先・案件(商談)を登録して進捗を追い、担当者が活動を記録し、月次で集計する。こういった営業活動の基本的な部分が中心の業務フローであれば、Zohoの設定画面とDelugeで作れます。

Zohoで十分かどうかは、利用人数ではなく業務プロセスの複雑さで決まります。 10人でも部門をまたぐ承認と例外処理が多いのであればSalesforceの作り込みが必要です。逆に100人いても業務がある程度標準的ならZohoで十分と言えるでしょう。

Zoho CRMが向いているのは、具体的には次のような条件に当てはまる会社です。

  • 業務プロセスが一般的な営業活動のフローに則っており、部門をまたぐ承認や分岐が少ない
  • CRM専門の人材を採用・外注する予定はなく、社内の担当者で運用したい
  • Salesforceのライセンス費・値上げに負担を感じている
  • 顧客管理のほかに、問い合わせ管理や会計など業務ツールの一元化も視野にある

この条件に当てはまるなら、乗り換えの検討を具体化する価値があります。筆者が移行して困らなかったのも、ちょうどこの範囲の使い方でした。
今の業務フローが複雑すぎる場合は、業務の再設計を行って標準化することで移行難易度が格段に下がります。

Salesforceが向いている会社

一方で、Salesforceを使い続けた方がよい会社もあります。部門をまたいで承認や引き継ぎが連なる業務プロセス、作り込んだ仕組みが業務の中核になっている状態、専門知識を持つ人材を確保できる体制。このいずれかに当てはまる会社なら、Salesforceの作り込みの自由度と、拡張アプリや支援会社の層の厚さが費用に見合います。

逆に言えば、専門知識を持つ人材を確保できないまま高機能なSalesforceを契約しても、費用に見合う使い方はできないでしょう。

Salesforceが向いているのは、具体的には次のような会社です。

  • 部門をまたぐ承認や分岐が多く、業務プロセスが入り組んでいる
  • AppExchangeのアプリや独自開発で作り込んだ仕組みが業務の中核になっている
  • Salesforceの管理者や開発者を採用・外注でき、複数人で担える体制を保てる
  • ライセンス費と値上げを、得られる自由度に見合う投資として説明できる

この記事はZohoへ移行した立場で書いていますが、上の条件に当てはまる会社にまで乗り換えを勧めるつもりはありません。作り込んだSalesforceを手放して移行する負担は、作り込みが厚いほど重くなるからです。

迷ったときの判断チェックリスト

ZohoとSalesforceのどちらとも言い切れない場合は、次の9項目のうち当てはまる数を数えてみてください。

  1. 業務プロセスは部門の中で完結していて、部門をまたぐ承認や分岐は少ない
  2. CRMの月額予算は1ユーザーあたり6,000円以内に抑えたい
  3. CRM専門の人材を採用・外注する予定はない
  4. カスタマイズは設定画面と簡単なプログラミングの範囲で済みそうだ
  5. Salesforceに使っていない項目・レポート・自動化が溜まっている
  6. 今後の値上げを避け、費用を予測しやすくしたい
  7. 顧客管理以外の業務ツールも一元化したい
  8. 移行したいデータは取引先・商談・活動履歴が中心だ
  9. 契約更新まで3ヶ月以上の余裕がある

6個以上当てはまるなら、Zoho CRMへの乗り換えを具体的に検討する段階です。3個以下なら、今のSalesforceを続ける方が合理的でしょう。当てはまる数が4個か5個だった場合は、料金の軸と移行の章だけを読み返して、コストの差と移行の負担を見比べてみてください。

Zoho CRMについてもっと知る

チェックリストでZohoに傾いたなら、次にやることは自社の実データを入れてZoho CRMの画面を触ることです。項目の並びや入力のしやすさは、実際に使ってみないと分かりません。

Zoho公式サイトに移動します

まとめ

ZohoとSalesforceの比較は、最終的に次の6点に集約できます。

  • 料金は同じグレードで約4倍の差がある(エンタープライズ級で月額5,660円と21,000円)
  • 機能はZohoとSalesforceどちらも中小企業の実務には十分。差が出るのはどこまで作り込めるかと価格
  • Zohoは学習コストが低く社内の人材で運用しやすい。サポートの回答も早い
  • 日本語情報の量と専門人材の採用しやすさはSalesforce
  • SalesforceからZohoへの移行は現実的にできる。ただしカスタマイズと自動化は作り直しになる
  • 決め手は業務プロセス・社内体制・コスト許容度の3条件。利用人数は目安にすぎず、Zohoで十分かどうかは業務プロセスの複雑さで決まる

比較記事を読み比べて終わりにせず、無料の範囲で自社の実データを触って決めるのがおすすめです。SalesforceからZohoへの移行を経験した立場から言っても、それが失敗を避ける一番確実な方法でした。机上の比較では見えなかった自社との相性も、実データを入れたZoho CRMの画面を触ればはっきりします。